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早朝の港――朝と言ってもまだ日は昇っていなくて真夜中同然の暗さだった。その真っ暗な埠頭で男が一人ビットに腰かけ海を睨んでいた。そこにもう一つ、人影が駆け寄ってくる。
「ラルフ少佐」
「ミューラーか」
ラルフと呼ばれた男はビットから腰を上げ声のした方へと身体を向ける。声を掛けたミューラーという男はラルフへ対してピッと伸ばした手を額に当てて所謂――敬礼の形を取っている。この日本では聞き慣れない名前。そして、一般的な上司部下では使わないであろう階級だ。
「いよいよ、今日だ。まさか、こんな姑息な手を使う羽目になろうとはな」
「所詮、人間など下等な生物、我々に使い古されて当然の種族です。ましてやその下等種族に我々の力を貸し与える等――」
「そして、下等種族共と共存する等と抜かすあちらの世界の腑抜け共――いずれは全てを壊滅させる。そのためにも下等種族が要とするあの『小娘』を消す。くれぐれも言っておくが我々の手口とバレるわけにはいかん」
「分っていますよ。人間共の法律や決まり事では我々の力は測れない……つまり、この世界の治安組織は無力。警戒すべきは同じウォーマ」
「奴らの目を欺くには――つまり、人間には人間というわけだ」
――
―――――
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