第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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 蒼い波動は二人を取り巻いてゆき球体として収束し、蒼い波動の球体となる。そして、衝撃波を発して上方へ跳ね上がって天井を突き破った。  コンテナを脱した蒼い波動球はトラックの走っていた車線の直線状上方にまで上昇しそのまま波動のジェット噴射により東方向へと発進した。 「……っ?」  波動球体の中で七海は目を開いた。視界はクリアーだった、あまり経験の数が多いわけではないがゴーグルをつけて水の中に潜った時のものになんとなく似ているような気がした。 「え……」  それともう一つ、自分がいま抱きかかえられているというのが感じ取れた。目で自分の状況を確認できない……だけど、なんとなく懐かしいような感覚だった。  海翔に――そうだ、熱で倒れた時。違う、それより前に冷たい……だけど、突き刺すような冷たさじゃない。この蒼い波動の球体もまるで優しい夜の安らぎのような『涼しさ』だった。 「これ……って……?」  懐かしさの正体は分らない――分らないまま、青い球体が弾け飛んで視界に元の海と空が飛び込んできた。かなりの高度にいるのが自分でも分った。落下する――その前に浮遊感を感じた。  目を辺りに向けてみると七海と彼女を抱きかかえているウエイブを青い波動が風となって取り巻いてるのが見え、荒らしい風ではないけれど二人の落下する勢いをやわらげてくれているのが分かった。 『ッ……!」  コンクリートの堤防が間近にまで迫ってきた時、風が吹きつけ取り巻く音に呻き声が混じったのが七海に聞こえた。その時、ウエイブのボディーが飛沫となって霧散し海翔の姿へと戻った。 「キャッ!!」    風が止み最後の数メートル、緩やかな落下からストンと落ち七海は思わず悲鳴を上げた。だが、海翔は七海を担いだまま体勢を崩さずに綺麗に着地した。 「大丈夫?」  耳の側で悲鳴を聞いたからなのか、心配そうに声を掛けた。 「うん……大洋くんは?」  七海も呻き声を心配して海翔に聞き返す。 「悪い……」 「あ、ごめん重いよね……!!」 「いや、そうじゃないけど……」  海翔に気を遣ったあまり早とちりしてついでに海翔に『女性に重いといわせた』ことになったがさっと海翔の腕から降りた。それと同時に海翔の身体が傾いて逆に腕から降りた七海が海翔の身体を左腕にしがみ付く形で支えた。
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