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「大丈夫なの……?」
「正直、かなり痛い……」
さっきからずっとリストバンドを付けた左手で脇腹を抑えている。ここにまで飛んでくる今の変身も身体に触ってしまったことだろう、そう思うと七海の胸の中に自責の念が湧き上がらずにはいられなかった。だが、謝るよりも海翔が休めるようにと思えた。
「どうしよう……休める場所とか……は」
「大丈夫……しばらくここで休もう」
釣り人が通って良そうな糸くず等が落ちている突き出た堤防……眺めがいいというわけではない。二段構えになっていて腰掛けている状態から簡単に海には落ちないようになっている、ただ潮風が非常に強い。でも、それほど気にしていないらしく海翔は堤防の一段目に腰かけた。
「大丈夫?寒くない……?」
七海は自分の着ていた上着のボタンを外しながら駆け寄る。
「いや、大丈夫……」
勿論、海翔は断った。流石に女子に寒い思いをさせるのは気が引ける。そんなことすれば後ろめたくてかえって逆に冷えてしまいそうだ。
そして、断られた七海は上着を着なおして棒立ちになっている。
「あの……君も座って。君だけ立っているっていうが……スペースは空いてるんだから」
「え、じゃあ失礼します……」
ペコリと頭を下げてから七海は海翔の二つほど隣に腰を掛けた。海翔はシ―フォンを取り出して画面をポチポチと触れてコードを入力していく。
二人の間にあるのは一人分の間だけでなく沈黙。以前のお見舞いの時にも見舞われた気まずくてしょうがない沈黙だ。病院の時と違い波と潮風とに多少は紛らわせられるが二人とも気まずさは自覚している。
「……メールですか?」
見舞いに来てくれた知人に気まずさを味合わせた経験に堪えるものがあったのか、七海が海翔よりも先に口を開いた。話しかけられた海翔は少し画面を叩くのを続けるとポケットにシ―フォンを仕舞い込んでから七海の方へと向き直った。
「ええっと、違う……ええっとメール自体、最近は《RINE[リン]》っていう通話アプリ使ってるから……今の質問は誰かと連絡してたって意図でいいのかな?」
「えっと……あぁ、うん……」
特にそんなこと考えてなくて適当に話しかけていただけなのだが、そうとは言いにくかったので海翔の聞き返しに対して頷いた。
「一応、助けを呼んだ……」
「助け……?」
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