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「どうしてここが……まさか発信機……?」
海翔は上着を脱ぎポケットや服の裏側を探り始めた。それを見て七海自身も上着を取ってポケットの中に異物があるかどうかを探ってみる。しか、し異物は見当たらなかった。
「……いや、今更発信機を見つけた所で遅いか……あいつ等とは別れて俺達を探してたの?」
《ニュッ》
肯定ということだろうか問いかけられた角(牙?)を生やした彼女は身体を縦に振る動作を繰り返した。そして、羽ばたくのに疲れたのだろうか七海の側にまで羽ばたいて行き肩まで止まった。
「ああ、その子女性みたいだから、君の方が取っつきやすいみたいだな」
《ニュウ》
「あ……本当だ」
頭の中で何となく女性の声で《よろしくおねがいします》と再生された気がした。それと挨拶の他にもう一言----
「『ユニ』っていうの……?」
七海はなんとなく使用人を思い浮かべた。勝手なイメージではあるが実際に磯貝家で働いている人達がいるのでなんとなくそんな気がしたのだ、しかし実際に見ている人たちに比べて若く馴染みやすそうな印象を受けた。
「君も名前があったんだ……あれ?、『一角鯨』ってメスは牙が生えないだろう」
海翔は穴あきトラックを見張る為に灯台の影からそっと頭を出した。そして、意外にも向こう側を見ながら会話に突っ込んできた。そして、突っ込まれたユニは七海の肩の上で固まっていた。
「あっ……」
《……》
すると、次の瞬間ユニの牙がスッと内部に引っ込んだ。そして、七海の方を向いて何かを訴えたがっているような眼差し(?)を沈黙しながら送り込んで来る。が、次の瞬間――
《ニュッ、ニュッ、ニュッ!》
「ん……ん?」
『メスのイッカクに角は有り得ない』と言われその弁解をユニは捲し立て始める。主に『牙の伸びたメスも稀にいるんです!』とか『そもそもウォーマの世界に住んでいるイッカク型の海獣がもとになってるんです!その海獣は羽搏いて飛んでいて角は出し入れが可能なんです!』と後者の言い分は七海には言っている意味が分からなかった。
「えっと……」
「ユニの言い分通りなのか……作った奴が雄雌の牙の有無を知らなかったとしか……いや、それよりもだ」
潮風の音だけが響いている。だが、それに別の音が混じって来るのが分かった――排気音それが近づいてくるのが聞こえてきた。
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