第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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 四台の車が港に走り込んでくる。一台のトラックに二台の乗用車、そして向かい合うように一台のバンが乗り込んできて停車し、ドアが開いて乗り込んでいた者たちが降りてくる。  三台の車のグループからは七海に絡んでいた男とその部下と思わしき男達。そして、白いバンからは迷彩柄の服を身に纏った二人の男が運転席と助手席から降りて両勢は向かい合う形となった。 「ご苦労だったな」  先に口を開いたのは迷彩服を着た中年程のだった。こちらのほうが上司なのだろうかもう一人の若い迷彩服は何もしゃべらずに一歩下がった所でやや畏まって控えている 「あのトラックの中だ――おい、取ってこい」  命じられた黒服の男がトラックのもとへと駆けていくのを見届けてから元社長は迷彩服の男の方へと向き直る。以前に座っていた位置が位置からなのか部下に対しても迷彩服の男たちに対しても威圧的な声だった。 「約束は守ってくれるんだろうな?」 「努力はする」 「努力ではない、絶対にと約束しろッ!!」  曖昧な言葉に怒鳴り声が返された。社長の座に居た時から武器、重火器系統の密輸を続けてきたが『誘拐』は初めてだった。それでも憎き磯貝への復讐が出来るのと海外逃亡の資金が手に入れられる一石二鳥のチャンス――リスクを負う価値はあると踏んで行動した。 「とは言ってもだな、小娘一人を誘拐するために街中でスタンガングレネードを打ち放し……確かにこの世界の警察組織からすれば混乱させられるかもしれないがな」 「街中の人前という誘拐には不向きという油断を突いたのだ」  自慢げに語る元社長の話を聞いた迷彩服の男の表情がなんとも言えないものになった。裏を書いたとは言うがただセオリーを馬鹿にし過ぎて考えなしに奇策を打ったつもりだけにしか見えない。  まぁ、目的のものを持ってきてくれればどうでも良いのだが。 「社長、大変です!!」 「なんだ!!」  だが、その最低ラインを保てているかどうかまでもが怪しくなってきたようだ。迷彩服の男はアクシデントを確かめにいく元社長の跡を着いていく。 「こ、これはッ!?」  トラックのコンテナ部分に突くと社長は驚愕した。コンテナは蛻の空、加えて天井は内側から突き破られて大きな穴が出来ている。迷彩服の男は不機嫌の滲み出た溜息をつき声を上げた。 「これはどういうことだぁ!?」
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