第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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「やったかッ……!?」  仕留めたと思われた矢先、爆炎の中で立ち上がる人影の姿があった。そして、人影は火達磨のままゆっくりと足を進め始める。 「化け物めッ!!」  機関銃が弾丸を吐く。火達磨の男は襲い掛かる弾幕を一つも避けようとせずに全身へ銃弾を浴びていく。身体は銃弾に圧されるように後ずさっていきそして、海にまで叩き込まれた。 「やれやれ、ミューラーめ……『アレ』を試すつもりか。人間相手に大人げの無い奴だぁ……」 「ッ……つ、次は貴様の番だ!!」  元社長も含めて全員が煙の中から出てきた男に全員が銃口を向けた。 「た、大洋くん……どうしたの……今、人が――」 「静かに……もう完全に抗争だ、生き残った方がこっちの敵になる。もう、共倒れを願うしか……」  七海を庇いながら海翔はプレートを取り出した。それに対して同調しようと念じるとプレートが僅かに光を放つ。だが、その波長は海翔の望む状態とは違うものだった。 「……死ねっ!!」  その後方に社長が男に向けてハンドガンの引き金を引いた。それを合図に他の者達もハンドガンに持ち替えて一斉に男へと発砲する――打ち込まれた銃弾の衝撃で男の身体は踊るように揺れるが倒れることなく、弾幕が途切れると直立する。 「ッ……!?」  海翔はその光景をしっかりと目にしていた。それと共にしこたま銃弾を打ち込まれた男の身体の銃創から青い血が流れ出しているのを―― 「ふぅ……中々、痛かったぞぉ?」  弾丸を撃ちこまれた男は何事も無かったかのように顔を上げて、口を開いた。その有様を目にした弾丸を撃った男達は戦慄し、恐怖する。人間でないという事は分っていたのだ。人間の法律では手が出せない域の犯罪を簡単に行える、そうすれば完全犯罪が簡単に行える更には報酬が自分達には与えられると約束されたがために手を組んだ。  その矛先が向く可能性は頭にあった。大量の銃器を所持していることで安心していたのだ。だが、これほど銃弾を撃ち込んでも平然としている相手に男達は気付きつつあった。『自分達は間違えたのではないか』と―― 「な、なにをしている!!速くランチャーを撃てッ!!」 「は……ハッ!!」  元社長に発破をかけられ男達は一斉にRPGを構え、引き金を引いた。爆薬の礫は真っ直ぐに男へ飛んでいく。が男の姿が歪んだのは誰にも見えなかった。      
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