第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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「……変身」  RPGが飛ぶのとほぼ同時に灯台のかげから海翔は飛び出した。そして、脱出のために温存し回復を待っていたウエイブの力を開放して纏い駆け出す。そこに男へ爆薬が着弾し爆炎が巻き起こる。だがその内側から黒い靄が爆炎を掻き消すように噴き出す。 「ヒッ!?」  男達は熱気が肌に触れるのを感じ、その大元が前方から押し寄せる黒い靄である事を察した。これに?み込まれるのは炎に呑み込まれるのと同じことだろう。だが、その寸前に黒い奔流の前に青い光が降り立った。 『ハッ!!』  青い光が弾け飛びウエイブの輪郭が露わになった。同時に掌を重ねあわせて黒い靄へと突き出した。それを合図に青くクリアな波動が全身から放出されて掌に集約し奔流となって黒い靄に放たれた。  二色の奔流は衝突する。そして、一瞬の拮抗の後に周囲への衝撃波を撒き散らして奔流は相殺された。それにより前方にいる敵の姿が露わになった。 『ほう、脱走したウォーマのガキが混ざっていると思ったが……貴様はウエイブとやらか。あの小娘を連れたのは』  黒い靄が晴れて、敵の姿が露わになった。個体の名は頭部の形状からイカを思わせるウォー マ‐ソードチップスクイッド‐。イカの柔軟性の高いイメージに反してその肉体は『剛』に寄せられたよう屈強な肉付きをしている。 『……何故、あの子を付け狙う』 『ふん、小遣い稼ぎってやつさ。ウォーマによる力を使えばこの国の警察組織では検証不可能になる』 『確かに……そんなせこいやり口は想像つかないだろうなッ!!』  ウエイブの足が地面のコンクリートを蹴り、上方へ跳躍し一回転する。間合いを詰めた所に落下の勢いに乗った状態で右足を蹴りだす。 ウエイブの重量が落下の勢いをのせて叩きつけられる――だが、ソードチップは片腕でその一撃を受け止めた。  柔軟性の高い体組織に衝撃が吸収されたのかウエイブは跳ね返らず、屈伸運動を咥えて身体を跳ね上げ一回転し着地する。だがそこを狙ったソードチップの拳が突き出されてウエイブの胸に強く打ち込まれる。 『ヴァッ!?』  その衝撃の強さにウエイブは踏ん張る事が出来なかった。鳩尾に衝撃が奔ったかと思うと浮遊感に襲われ次の瞬間には背面を壁に――灯台に打ちつけられていた。 「きゃっ!!」 更に灯台を衝撃が伝ったにだろう。身を隠していた七海の驚き、短かくもハッキリとした悲鳴が聞こえてしまっていた。
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