第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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『不味い……』  ウエイブの身体は灯台に叩きつけられ地に落ちた。それでも先に七海の方へと気を向ける 「あ、あの小娘の声だ……そこにいるぞ!!」  しかし社長が七海の存在に気付いてしまっている。その声が七海の事を全く諦めていないのが明らかなものにしている。 『馬鹿野郎ッ!!つまらないことに拘らずに逃げろッ!!』 「どこぞの馬の骨とも知らぬ部外者は黙っていろ!!殺せ……殺してしまえ!!」  忠告は聞きいれられなかった。心の中で海翔は舌を打ち、七海のもとに向かって地面を蹴った。もう、選択の余地など無かった。この近射程、一瞬でも迷っていたら間に合わなかっただろう。 『くッ……!!』 「ッ……大洋くん!?」  撃ち放たれた弾幕が全てウエイブの背中へと命中する。fアーマーに損傷はない……だが、銃弾の衝撃は完全には消せずに海翔の身体へまで届き身体を寄せる七海にまで振動が伝わっている。 『じっとしてて、危ないからッ!!』  どれだけ銃弾が撃ちだされ続けていただろうか?弾薬が尽きたのか音が止んで静かになった。七海はウエイブの腕からそっと覗こうと顔を出す。 『待て、見るなッ!?』  海翔の制止する声は間に合わず七海は海翔の背の後ろにある光景が目に入り込んだ。 「え?」  そこには人が転がっていた。そして、赤い血が流れ出して水溜りを作っている。それは先程まで銃を握っていた筈の黒服の男達、倒れ伏している男達の中には背中に小さな穴を開けられてそこから血が噴き出している。 「た、助けてくれ……ッ!!」  そして、一つ助けを求める声が聞こえた。この事件の張本人である元社長、自分が殺そうとしていた少女に向かって無様にも這いつくばりながら手を伸ばしている。見てからも手遅れではなさそうだが助けるか否か―― 「大洋くん……怪物をお願い」 『まさか――』 「大洋くんは……助けなくていい。わたしの勝手だから」  七海はウエイブから離れた――海翔が怪物と対峙するのはどの道の話だ。だから、七海は隠れるだけではない選択肢をとった。ただ、その理由は海翔の中に葛藤を感じ取ったからかもしれない。それに加えてこうして自分を助けてもらうのに手を煩わせてしまっている。  だが、彼自身の命もかかっているこの状況で「戦わないで」ということなど出来はしない。そして、それを承知の上で見捨てるのが嫌と言うのなら―― 
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