第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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『待って……クッ!!』  ただ、七海は綺麗ごとで見捨てたくないと宣ってわけではない。自分を 守っていれば海翔は嬲られるだけ。こうして無理やりにでも離れればウエイブは敵に立ち向かう事が出来る。ウエイブは七海の思い通りににソードチップへと飛び掛かっていった。 『おっとぉ!!』  七海の耳に後方での衝突音が響いてきた。殴り、蹴り合っているだけとは思えないような音が響いてくる。だが、それを他所に七海は倒れ伏して手を伸ばす男の元にまで駆け寄っていく。 「か、隠れますよ――」  元社長の元へ手を伸ばす。元社長がその声を聞いて俯いていた顔を上げる。 「馬鹿め――!!」 顔を上げた瞬間、男の顔が凶悪に歪んでいるのが見え、懐に忍ばせていたハンドガンを七海に向けていた。 「待って……・今はそんな事をしている場合じゃありません……銃を下ろしてくださいっ!!」  銃を突きつけられてなお七海は銃弾の軌道上――男の正面に立ったまま男を諫めようと口を開いた。声はウエイブの耳にも届くがソードチップと攻撃の欧州を繰り返している中で七海の方へと気を取られた。 『気が散ってるぞぉ!!』     『ッ、グァ!!?』  その瞬間をソードチップは見逃さなかった。広げた掌の中へ烏賊の頭部を思わせる剣が生成され、ソードチップは剣を握った腕を振るって剣を振り切った。至近距離にも拘わらずウエイブは大してものともされずに薙ぎ払われる。 『いそ……・がい……』  『おっとぉ!』  倒れ伏しながら七海に向けて手をの伸ばすウエイブへソードチップを嘲笑うようにその背中へ剣を振り下ろした。  『グァァァっ!!!』   耳障りの悪い音と共にウエイブの背中が裂け、青い液状のエネルギーが血のように噴き出る。海翔自身に刃は届かない。だが強化された感覚により痛みは通常の何倍にもなって伝達される、人間が背中を深く斬りつけられた時に感じる痛みが遥かに強いものとなって―― 「大洋くん……!?」  絶叫が七海にも届き、そちらへ顔はむけられた。その瞬間に男の手により引き金は引かれた。吐き出される発砲音、弾丸は七海を貫かんと襲い掛かる。  だが、その瞬間七海の懐からユニが飛び出して弾丸へと真っ直ぐに突っ込んだ。 「え――」     コンマ一秒遅れて、金属音が響いた。七海が銃声に気付いて男の方へと視線の向きを戻していた時、男の額には穴が空いていた。   
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