第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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「いや……ッ! いや!!!! いやぁぁぁぁぁーーッ!!!」  張り裂けそうな叫び声が響き渡る。  手は頭を抱え込んだ。覆っていた手が離れた目から涙が零れ落ち、失意に落ちたのが見て取れるだろう瞳は後悔、絶望を映していた。  その打ちひしがれる七海の背後から忍び寄る者を告げる足音がするが喉を切り裂いて流れるような鳴き声にかき消されていく。 「ん?」  背後から歩み寄ってきたのは変身を解いたラルフ。その隣に降り立つのは異形の姿のままのミューラー。 「どうした変身を解かないのかぁ?商品は丁寧にあつかわんといかんのだがなぁ……」 『パワーが有り余ってしまっていましてね、鎮まるのに少しかかりそうなのですよ。しかし、これ程のパワーなら奴らに感知されて追手を差し向けられようとも蹴散らして見せますよ。それと、こちらを――』  ミューラーがその手に握っていたものをラルフへと差し出した。戦利品とでも言うべきだろう、ウエイブのアーマーがダメージの限界に伴う強制変身解除によってロックが解除されたドライバーを海翔から毟り取ったシステムの核であるドライバーだ。 『これが『ライダーシステム』か、実物を目にするのは初めてです』 「人間にもウォーマと同じように「水棲獣」の波動を授ける事が出来る……システムを使い変身する者をライダー又はカイゾーグとも呼ぶ。三年前にこいつによって多大な損害を被った……情けないものだ。『ゼロドライバー』とはな」 『全くです。出来損ないの試作品に打ちのめされる彼らは見限って正解でしたね。それよりも――』  おまけの戦利品を眺めるのを終わらせ、本命である泣きじゃくる七海の方へと目を向けた。そこに近寄り髪を掴んで引っ張るようにして顔を覗き込んだ 「ッ……」 「ふん、良い顔をしているじゃないか!!」  髪を引っ張られても七海は抵抗しようとする様子はない。良い顔と称されたその表情は頬を涙で濡らしたくって息を乱れさせた苦しいそのものとしか言えないものだ。だがラルフはそれがそそって仕方ないのだろう、涙などソース等の調味料のようなものだった。 「丁度いい、コレの『本当の使い方』とやらを試してやろう」  ラルフが懐へと手を入れた。そこから取り出されたのは透明なクリスタル。そして、無抵抗な七海の上着を開きシャツの第三ボタンまでを外した。そして、肌が露わになったところへクリスタルを押し付けた。
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