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「ガッ……」
身体に力を入れようとするとが纏わりつく波動が彼女を妨げた。だが、波動はクリスタルを通じて彼女とリンクしている。七海がそれを事細かく知るよしはないがソレを感じることは出来る程に、そして細かい操作は出来ないが裏を返せば大雑把で――そう、例えば単純な力に任せるぐらいならば。
「ウアァアァァァ……ガッ……ウガァァァァァアァァーーッ!!!!」
その雄叫びはまるで獣のようだった。それは守られていたか弱い少女とはいう事を忘れさせかねない程のものだ。ただ、それを傍観している二体は相変わらず七海が悶えているという程度にしか受け取らなかった。
そして、それが油断に繋がった――
『手動』に対して筋力に寄らない『念動』ともいえる波動の操作――その心得のない七海でも内部で噴火のように爆発的な動きを見せた情動に感覚を任せた時、クリスタルが青いスパークと共に弾き飛ばされた。
「なんだ……!?」
想定外の現象による動揺する瞬間、すかさず立ち上がった七海はラルフの手の中にあるドライバーに向かって飛びついていた。
「こ、小娘め!!」
七海の両手がドライバーを掴んだ。ラルフはドライバー引き抜こうにも七海が身体ごと食い下がり引き抜けず、思わず腕を振るったとき七海が両手で必死の思いで掴んでいた為にドライバーは振り払われた七海に掴まれたままだった。
「ッ……!!」
振り払われ倒れ込んだが七海はその手にドライバーを掴んでることを確認しながら立ち上がり海面に目掛けて走り出した。
「まさか、あの小娘ぇ……!!」
ラルフは七海の意図を察知してを翳した。すると、全身ではなく翳された手だけが異形の触手へと変化し七海に向かって伸びてゆく。
だが、それよりも先に堤防から跳び立って海へと飛び込んだ七海にその触手は届かなかった。冬の海のいて殺すような冷たさを前にして躊躇など全くなかった。当然ラルフも逃がすまいと駆けだしミューラーも続こうとする。
「お前は待っていろ!」
『ですが……』
「ウエイブは機動力に優れている!! 水中で二人揃って抜かれる可能性もなくはない!! それに今のお前の電撃は強すぎる。海中で電流の収束が保てず拡散すればどうなるか分かるだろう!」
『ハッ、了解しました!』
ミューラーが応じるのを確認するとラルフは再び怪人態を取り、七海を追って海中に向かって飛び込んでいった。
――
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