第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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そして、ツケは直ぐに回ってきた。  あと少しで届く――そこに七海の腰に触手が巻き付いた巻き付いた。七海の後方に触手の主の姿が見えた。 『たいようくん……ッ!!』  その時、七海はドライバーを手放した。ただ放したのではなくスナップを加えて海翔の方へと押し出す形で。水で満たされたこの空間ならば落ちてゆくことはなく、直ぐに海翔が辿り着いた。 『ッ……!!』 ドライバーへ手を伸ばして掴み取り装着し、ベルトが展開されて巻き付いた瞬間にグリップレバーを押し込む。 ≪ERROR≫ 『くそシンクロが……』  肉体の消耗がドライバーのスキャンに引っかかった――≪Ride on≫の代わりの警告用シグナルが発声された。その間にもソードチップは七海を触手で引き寄せ、掌にエネルギーを集約させていく、その顔は明らかに嘲笑っている。 『少し待ってて――』  だが、海翔の心からは『恐れ』は吹き飛ばされていた。『七海を守る』という確固たる目的の下に思考回路は統合されてその程度で揺らぐなどしない。 更に感覚器官は鋭さを増して稼働し海翔は極限ともいえる集中状態へと突入する。ソードチップから放たれる波動の流れをを照らし合わせるように辿って、辿って――自分の周囲にも朧げな波動の気配を感じ取った。 同時にドライバーにセットされたプレートの気配も海翔に流れ込んでくる。その二つの波動の波長を海翔は己の感覚を頼りにシンクロさせる。  極限の集中状態がシンクロを促し、ドライバーのクリスタルを起点に同調した周囲の波動を『無色』からウエイブの『青』へと染められ回転するタービンへと流れ込んでゆき海翔の周囲にも表れる。  そして現れた波動はいつもの穏やかな流れとは違い、激しく白い泡を立てて取り巻く渦となって海翔を包んだ。そして―― 『ッ……!?』  ラルフは『ソレ』をハッキリと見た。 渦巻く波動がカタチ取る。その姿はイルカに似ているようでその表情には穏やかさなどは欠片もない。その顔は獲物を殺すための牙を生やした獣そのものだ。 『キュォォォォォォォォォォッォッッ!!!!』  波動で象られた魔獣は咆哮し牙を剥いた。三日月の形をした尾鰭で水を蹴りまるで水の抵抗など無いかのようにラルフへと突っ込んでいった。ラルフは七海を二つの手で抱え込み他の触手を総動する。そして、次の瞬間身体を食いちぎられた。  
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