第3話 河馬 -アーマードフォーム-

30/44
前へ
/223ページ
次へ
『なッ――』  ような、錯覚を一瞬味わった。しかし、目が覚めた瞬間に魔獣はいなくてもウエイブはそこにいた。手は手刀を構えられ刀のように首へと水平に振るわれる、ミューラーの触手の形を髪の毛の様な部位が蠢き首もとに巻き手刀から保護した。 『ッ!!』  触髪がウエイブの手を絡めとろうと伸びるがウエイブはそれよりも早く腕を早く引っ込めた。更に身体は蹴ることもせず宙を舞うかのように上昇し、ラルフの頭上に達して正面にまわり脳天へ踵を叩き落した。  そして、ラルフが怯んだ隙に無理やり腕を開いて七海を開放して抱え込んだ。ラルフの触手が二人を絡めとろうと蠢き伸びていく。 だがウエイブは七海を抱きかかえたまま触手の隙間を針に糸を通すように掠ることもなくすり抜けて、加速して更に青色の透き通った光を放って完全に振り切った。そして、その先で青い波動を周囲に発生させて包み込んでゆく。 「ゲホッ、ゲホッ……!!」  周囲に発生した波動は周囲の水を捌けていった。水が無くなることで気道が通い七海は咳き込み、息を吸い込んで目を開きウエイブの方へと目を向いた。 「たいようくん……あれ、わたし生きて……る?」『ッ……ごめん、俺は――』  苦しそうに小刻みに息を吸う七海の姿が海翔の胸に突きささった。そして、自分の傲慢さを恥じて、彼女がどうやってドライバーを取り戻したのかを考えた。隙を突いたというのは考え付くが一歩間違えれば命を落としかねない、彼女はそれを実行し自分はそれに助けられたと実感する。 『なんで……あやまるの……?』 「話は後にするよ、まずは――」  外にはウォーマが健在、七海を抱えたこの状態ではろくに戦闘は出来ない。そして、海中には一体しか確認することができないとなるともう一体が港にいる、下手に逃げ出してしまえば海から追い付かれて挟み撃ちに会う。  つまり、このウォーマはここで倒すしかない。意を決して周囲の球体から出る。球体からでることで球体は歪み、ほころび始める。だが、そこへ手をかざす。  海に溶け込んだ波動へのシンクロを発動したことにより得た経験値により向上したウエイブの制御、処理能力と波動・オーシャニックウェーブの水への浸透する性質を利用し僅かな間だけでも霧散を防ぐように組む。普通の電気と違い拡散しやすくなるとは限らないのがオーシャニックウェーブの性質だ。
/223ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1068人が本棚に入れています
本棚に追加