第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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 『くっ……』  しかし手刀はラルフの身体を貫くことは出来なく深くめり込むだけだった。すかさず引き抜き青いウェーブを両方の拳に乗せ纏い叩きつける。 『デァッ!!ツァァー!!』  胴体へ連撃が撃ち込まれる。だがいくら早くても少しもダメージを与えられない以上、何発打ち込んでも意味のない事だった。  触手が振るわれると同時にウエイブは胴を蹴って後退する。それを追って触手が伸びてくるのをウエイブは脚で蹴り払った。幾つもの触脚に対してたった二本の脚から触脚を凌駕するスピードで蹴撃を打ち、捌いていく。 『埒が明かない――』  触手を打ち払い続けて更に後退し、一旦振り切る。触手は折ってこないがラルフを守るように周囲に展開されている。海という空間の恩恵を受けて機動力を最大にまで発揮できても攻撃が通らない、長期戦に持ち込むなら話は別だが今はそのような時間がない。一か八かフェーズを上げて≪phase・high‐wave≫によって攻撃を仕掛けるか――だが、それで仕留められなければ七海も海翔も終わりなのだ。 『……』  さっき自分がもがいてでも浮上しようと足掻かなかった結果が七海の危機を招いた。そのことを思い出し海翔はドライバーのグリップに手を伸ばす―― ≪チュニ二ッ!!≫ 『え――』 だが、その瞬間耳に届いた声の方へと目をやった。その姿を確認すると同時にラルフへ気付かれるよりも先にウエイブはその声のする方へと跳ぶ。ラルフが一瞬後に気付き回遊物にむけて触手を伸ばした。  だが、先に動いたウエイブと回遊物の意志が一致したがためにウエイブが先に掴み取り再び触手を掻い潜り振り切る。 振り切りながらウエイブは自分の手の中の物を確認した。それは地上で弾かれたブレイガン、それに変形合体することでユニの移動機能で運送可能状態になったもの。 『助かった!』 ≪ニュッ……!?≫ 手に取ると同時にユニを取り外し銃形態へと組み替え、ユニを取り外した。何かユニが驚いたような声を上げた気がしたが気に留めることなく引き金を引く。撃ちだされるレーザーは伸びようとする触手を牽制するが本体にまでは届かない。 『だめか、この程度じゃ……だが――』 『ニュウッ!!』  このまま突っ込むよりはマシな手段だと思ってグリップを押し込もうとしたが側頭部をユニに小突かれた。
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