第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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『ごめん……もう少し、もう少しだけ……頑張ってくれ』 「うん……あなたも頑張って……」  海翔は返事一つを聞いただけで安堵したことに腹を立てながらも直進した。今は風を避けることの出来るコンテナにまで戻るしかなく発進した。  ウエイブ単独時よりも劣るが十分に速いと言えるスピードで青い球体は海を突き進み、堤防にまで辿り着き、水面を破って飛び出した。 『なっ……!!』  戻ってきたのがラルフではなかったことへ驚愕するミューラーを他所にウエイブは水球を散らして降り立ち、風を避けるように七海をコンテナの陰に寝かせた。 『貴様……何故だ、何故、貴様なのだ!!ラルフ殿をどうした!?』 『挟み撃ちされる可能性を残しておかにあがってくるわけがない』  ミューラーへと振り返り海翔は言葉を返した。言葉にしみ出すほどの感情が高ぶるミューラー、力を振う理由はこの瞬間に当初の物から完全に逸脱していた。怒り、憎しみ憎悪――それらがある種のタービンを加速させ波動を生み出していく。 それに対して海翔は冷静か無感情なのか――外からは何を秘めているのかを知ることは出来ないだろう。ミューラーの箍のない激情が発電機のようにチカラを生み出すのを海翔は感じていた。 その上で海翔はチカラの為に感情の箍を外すことはない。海中でのシンクロにより得た制御能力により自らの意志によりチカラを生み出す。 『ズァ!!』 『ッ!』     二人のチカラが真逆の駆動式から生み出される。放たれたチカラも真逆――電撃を伴う荒ぶるミューラーの波動に対してウエイブの波動は清廉な……まるで青い水流のように波動が放たれる。 ミューラーのそれに比べれば強大さを感じないかもしれない。だが、確かな力強さでウエイブの周りを取り巻いていた。 『許さん……ユルサァァァァァァ――ッ!!!』 『ッ……』  波動を纏ったまま地面を蹴った。たった一蹴りで互いの腕が敵を打てる射程にまで近づき拳と拳が打ち合わされた。  一瞬の打ち合い――迸る波動がぶつかる。脚で踏ん張って勢いを殺したところで次撃を打ちだすタイミングも同時だった。 『くっ――』  腕力、防御力においては敵に格段に上回れているという事実を改めて認識する。軽く纏わせた波動による拳の連打を撃ち込むがやはりびくともしない。そして、力の差を誇示したうえでラルフはウエイブに雷電を放つ両手を突き出す。
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