第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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 突き出された手に対してウエイブも波動を纏わせた両手を突き出して受け止めた。腕力による押し合いだけではウエイブには分が悪いく、脚力を強化させより踏ん張る。そして、拮抗した瞬間に両者が同時に波動を放射する。波動は衝突し衝撃波が中心で生じ弾かれた。 ≪Phase・high‐wave≫ そして、両者ともにすかさず飛ぶ得物を手に取った。ミューラーの掌からは変曲を繰り返す軌道荒ぶる電撃が撃ちだされるが、ウエイブは撃ちだされるより先に跳んで引き金を引いた。 『グ――ッ!!』  銃口からは青い光球弾――それも先程の水撃弾から昇華した青い真空衝撃波動弾がミューラーへと襲い掛かった。電撃を撃った瞬間が隙となりミューラーは波動弾に着撃していく。  昇華した波動弾は電撃の防膜を砕き、膜の内の身体へ直撃し飛沫と共に炸裂していく。 『ズァァァッ!!!』  だが決定打にはなり得ない、着撃より無傷から少しマシになっただけのことだった。その証拠に波動弾を浴びながらウエイブの位置を確認して電撃を撃ちだしてみせる。  それも一度真上に伸びたうえでウエイブに目掛け軌道を直角に落ちていく。 『ユニ――』    真上からの落雷――それに対しセイバーが展開され、水流を纏った青い結晶刃が電流を打ち、薙ぎ払う。 『ダニィ……?』  ミューラーの目がウエイブの新たな得物へと向けられた。それをラルフを切り刻んだものと直感――いや、そこに至るまでの経過に当たる思考はない。直感と同じ短さにまで思考が短絡的なものへと削れたのだ。それは怒りの為か、それとも――今も膨れ上がる力か。 『シャッ!!』  ウエイブはセイバーを握りしめ、地面を一蹴りで間合いを詰めた。刃の分だけ射程は伸びる、拳の代わりに剣先があたる点にまで到達した瞬間に身体を捻った。 『グッ!!』  波動を乗せた刃を向けて身体を空中で回転させる。回転により威力を生む大きなふり幅によって刃が何度もミューラーに刻み付けられる。 『ツェア!!』   生まれて初めて振う剣――鉄パイプと違いただ殴るわけではなく剣先で切り付けねばならない。その点では折り曲げの効く腕に比べ不便だが逆上して精細を欠いたミューラーに当てていくのは難しくはなかった。人型であることと決して小さくない標的であるのも相まって剣先を外さずに当てていく。
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