第3話 河馬 -アーマードフォーム-

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『グォァァァッ――』  波動の制御が効かない中、トドメを刺すのに効果的な手段として海翔は首をねじ切ることを選んで手に掛けた。だが、ねじ切ろうと力を込めている間にその横から何か大きなものを叩きつけられ弾き飛ばされた。 『――ッ!?』 弾かれ、転がったところで元の形態でも常時発動型ではなかったもののこの形態では反響定位が全く使えなくなっているのにようやく気付いて、自分が飛ばされてきた方向へと視線を飛ばした。 本当なら目に映るのは人型の異形のはずだ。だが、目に映ったのは尻尾『らしき』ものだった。『らしきもの』と断言できないのはその大きさが理由だった――まるでファンタジーやらSFに出てくる大蛇と見紛うほどにそれは太くて長かった。そして、頭を上げる―― 『まさか……これが「ヒト」だったものなのかッ!?』  元から異形ではあった――だが、まさか御伽噺に出てくるような『龍』のような存在と直面するとは。いや、御伽噺じみた存在は初めからだ。  ただ、人型からの変貌が衝撃を与えたのか、それとも突如としての巨大化それに伴う敵の破壊可能領域の拡大を悟ったのか―― 『グッ……!!』  口部への雷電の収束、増大した波動が波動の砲弾となってウエイブへと撃ちだされた。避けることも出来ず、ウエイブは雷弾が直撃した。  ボディの亀裂が更に大きくなる――それと同時に海翔は力が抜けていく感覚を覚える。 『……やっぱり、長くはもたないか』  故にウエイブは攻め入った。浴びせられる雷電に構うことなく敵の眼前にまで跳ね上がって、豪腕を振るう。拳にはグレーブルーの波動を乗せて強化し顔面へと叩き込む。 『ドリャッ!!!』 『ギャッ!?!』  蛇のようにひと繋がりである程度の柔軟性のある巨体は衝撃を受け流すかのようにしなる――だが、衝撃の逃げ場を塞ぐかのようにウエイブが拳撃を続けて打ち込んでゆく。一撃の度に跳ねながらミューラーに飛び込み拳を打ち込み続ける。だが、柔軟な身体を撓らせて衝撃を受け流しそのままウエイブの身体へ頭部を振り上げた。 『ガッ……!』  打ち上げられた身体の真上に長い尾が振り下ろされる。腕を組んで防御するが足場のない空中で抵抗することは出来ずに地面へと叩きつけられた。一撃の度に一帯に広がる程の衝撃が何度も繰り返されていく。
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