第3.5話 茶番

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「海翔、どいて」 「……」  黙って首を横に振るって拒否するだが、止まってはくれない。 「海翔、家ではペット禁止ってルール分ってるよね?」  引き下がるわけにはいかない――だが、力では姉に叶わなかった。一瞬で扉からどかされて、海翔は早々に抵抗を諦めて洗面所から離脱した。 「もう、怒らないわよ飼い主さん探しは一緒にしてあげるから。貰ってもらうためには綺麗にしてあげなきゃいけないし。さぁて、どんなカワイ子ちゃんかなぁ――」  海花は別に動物やペットが嫌いなわけではない、ただ寿命が短く別れがつらいのが嫌なだけなのだ。海翔が「怒られるから逃げ出した」と思い、捨てられてる動物を放っておけなかった等可愛い所があるなと思いながら風呂場への扉を勢いよく開いた。 「え――」  まず、鳴き声というより「人の声」に近いものだった。 そして、その動物の特徴は肌色だった。体毛は頭部以外にはどこにも確認できない。 その頭部もまた毛むくじゃらというわけでない。あるのは眉毛、まつ毛、髪の毛だけだろう。髪が黒く長めのが特徴だった。   「あれ――?」 性別はメスであろうと確信した。今は真正面で向き合っているが、扉を開けた時には柔らかな丸みを帯びた臀部も確認できた。 胸は程よく或いは大きめと言える程に膨らんでいるのを確認できる。腰は少しくびれ、手足にはしなやかさがある。 外見的魅力は当然女優やモデルには及ばないだろう。しかし、生まれたままの姿の少女を生で肉眼に収めた際に生まれたのは雑誌やテレビ越しでは得られない刺激だった。湯船で暖められた肌はほんのりと赤く染まっていた―― 「ッ……!!」  そして、少女の方は脚をぎゅっと閉じ手で身体を覆って隠した。羞恥で目に涙を溜め、頬は身体以上に赤くなって声を上げるのを必死にこらえている。 「ぅ……」  それは、まるでマグマの胎動のようだった。海花は自分の胸奥で熱く、大きな衝撃を感じる。  失礼と分かっていながらもジッと見つめ続けてしまう。濡れた上に羞恥で赤く染まった肌は肝心な部位が隠されているというのに年不相応な色香を本人の意思無くして醸し出す。それが寒い外から帰って来たばかりの海花の身体を一気に火照りあがらせて、その手を艶やかな肌に向かって伸ばさせた。 「あ……」  七海の華奢な肩に手が回され、二人は間近で見つめ合う。
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