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見上げた空は、分厚い雲に覆われて、そのせいで辺りは夕方にしては随分と薄暗い。
「まずいな……」
嘆息したところで天気が良くなる筈も無く、そんな空に対して生憎傘を持ってなかった俺が出来る事は数少ない。 自らの不幸を恨みつつ、ただ自宅へと足を速めるだけしかない。
そうして、馴染みの商店街の一角を抜けようとした瞬間。 額に一つ、また一つと雨粒が当たった。
――降り出してきやがった、って……
「うぉぉぉっ!?」
まばらな雨粒はあっという間に土砂降りに、バケツをひっくり返すとはこういうのだろう。
全力で走る俺に比例してくれてるように全力で降る雨。
勝敗なんて決まっている。
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