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「…………」
被害状況、突如として降り出した夕立にまるでプールにでも飛び込んだかのように下着までぐっしょり。 それだけならまだしも、長年愛用して来たおんぼろ携帯のディスプレイは真っ暗、完全にご臨終である。
「最、悪……」
度重なる不運にげんなりしてしまう、一体どうしてこうなった。 誰が悪い、どうみても傘を忘れた俺ですありがとうございます。
されども軒先にいるのは、もはや雨宿りよりも休憩の意味合いでしかない。 そんな俺の目の前に傘を差した女性が通り過ぎた。
「予報、当たった……」
「そうね、あなたのおかげで助かったわ」
「……?」
不意に聞こえた2つの声に女性の肩に視線を向けた。 正確には肩の上。 身体のほとんど傘で隠れているが、そこに細く伸びる2本の足がぶら下がっているのが見えた。
一昔前ならばそこに心霊現象に遭遇したような薄ら寒さを覚えるだろうが、今感じている寒さは身体が濡れ鼠のようになっているせいだ。
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