序章 ―見知らぬ少女―

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 鈍色(にびいろ)に輝く湾曲刀(サーベル)が少年の懐に閃いた。 少年は軽い身のこなしで避けると、自分の身の丈以上にある長剣(ロングソード)を横一文字に振り払う。闇にとけるような長剣は覆面を被った黒装束の懐を抉ると思われた。しかし、その進行方向を湾曲刀に阻まれる。強烈な打撃音と共に飛び散る火花は少年の顔を一瞬だけ写し出した。  弾かれる剣の動きに身を任せながら、反対方向に一回転させ、剣の刃を回転する方向に向け、男に向かって振り切る。男は、未だに弾かれた衝撃で仰け反っていた。少年はその隙を逃すことなく、そのまま男の腹へ刃を振るう。  一瞬の出来事だった。目にも止まらぬ速さで男の懐を抉る。男は、何が起こったかも分からない表情を歪め、鮮血を撒き散らしながらその場に倒れ込んだ。  まだ一人しか倒していない。気配から探れば、敵はまだ五人から六人残っている。  突然、後ろを明るく照らす光が、少年の影を作り出した。少年は今までの戦闘から学んだ勘が、光属性の攻撃魔法だと察知する。少年の後方から容赦なく飛んでくる光の弾。かなり大きい。まともに食らえば致命傷を負うのは必須だろう。  だが少年は冷静さを失わない。少年は思いっきりジャンプすると、後ろに一回転し回避する。少年のコートを僅(わず)かに掠りながら飛んでいく光弾。それに動じることなく着地し、弾が飛んできた方に大きく飛翔する。
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