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闇に溶けるような黒装束でも少年の目には関係ない。長剣を構えたまま、猪の如きスピードで突っ込んでいく。
しかし、相手もそこまで馬鹿ではない。男は杖を掲げ、何かを呟き始めた。
少年はその動きに見覚えがある。魔法の詠唱。様子からすると、小型の攻撃魔法のようだ。それならば、避ける理由がなくなった。構わず踏み込み加速する。長剣を掲げた少年は狼の如く鋭い眼光は彼の闘気を表しているかのようだ。
黒衣の男が詠唱を終了させると同時に、背中に飛翔する無数の影。
小型の魔法『クレイブ』。無数の小さな岩石を連続で打ち出す魔法。
威力もそれほど無く、相手の足を止める程度にしか使えない魔法ではあるが、うまく使えば中型魔法の詠唱時間は稼げる使い勝手のいい魔法だ。
無数に降りかかる岩石は少年に容赦なく襲いかかってくる。しかし、少年は足を緩める事はない。むしろ加速して、岩石の群れへと飛び込んで行く。
「せい!!」
少年の前に飛んでくる岩石を、巧みな剣捌きで切り落としていく。少年に対しては全く意味を成さない攻撃。
それを見た黒装束は、一度バックステップで距離を取ろうと試みる。しかし、時は既に遅かった。
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