序章 ―見知らぬ少女―

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 突き飛ばした反動で、ジャンプし回避する少年。その勢いを殺さぬまま、もう一人の黒装束のとの間を詰める。  漆黒の刀身を振り被り、流れに身を任せ振るう。 「ふんッ!!」 攻撃を防ごうとした湾曲刀と激しい激突音と火花が飛び散る。それだけで攻撃の勢いは止まることはなかった。湾曲刀は、硝子(がらす)のように粉砕され、刃が破片と共に吹き飛ぶ。 「なっ!!」 刀が折れることなど考えていなかった男の顔が歪んだ。その頃には脳天から垂直に頭が裂かれていた。  頭にめり込んだ刀身を一気に引き抜き、後ろから飛んでくる投擲(とうてき)ナイフを弾き飛ばすと辺りを見回す。 ――残り2人。  恐怖の色に染まった顔が、暗闇のなかでも伺うことができる。  恐怖の支配する黒装束の男二人の思考には冷静と言う文字など微塵も存在していない。半ば、発狂にも似た声で片手を掲げる。  早口に口ずさまれる詠唱の呪文。距離はそこそこある。いくら少年が駿足(しゅんそく)と言えど簡単に詰められるような距離ではない。走り出したときにはもう遅かった。  巨大な業火が辺り一面呑み込んだ。街の広場をゆうに飲み込むほどの広範囲の魔法。
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