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男たちはしばらくの間、火炎を掌から放出し続けた。少年がどのように回避しても回避しきれる筈がない。
暫くして魔法の発動を解除する。緑で生い茂っていた樹海は、一瞬にして変わり果てた。真っ黒な地面から発せられる焦げた鼻につく臭い。他の木々に引火した火が、所々赤くパチパチと紅色の火花を散らしている。
そんな中、辺り一面に生い茂っていた草や木を焼き払い、少年までも巻き込んだのを男は確認していた。
「…ハ、ハハ……。ざ、ざまあ見やがれってんだ……。」
それを見た黒装束の一人が安堵(あんど)の表情を浮かべながら苦笑する。
「誰が死ぬかよ。」
黒装束の男は、背中から聞こえる重々しい声に一瞬で背筋が凍りついた。今、炎の中に巻き込まれたはずの少年が今ここに存在しているのだ。
「そんな温い攻撃で俺を殺せると思うな。」
「ひ!!、たすけ!!グあぁ!!」
恐怖に染まった男の命乞いも聞き入れぬ少年は、喉元を長剣で斬り裂いた。噴水のように噴き出す鮮血。辺りの草木が一瞬で 赤に染まる。
それを目にした、最後に残った男は本能的に悟った。
――捕まれば殺される。――と。
男は百八十度回転すると疾風の如く駆け出した。
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