■始まり■

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それから、再び夜の暗闇をヘッドライトで照らし、車を走らせる。 海岸沿い迄来ると、ちょっとした息抜きをしようと思って、僕は車を降りた。 《ガチャリ……》 《バタム……》 海岸沿いの堤防によじ登り、そこに両足を放り出して座り込む。 すると、自分の座っている堤防沿いを《コツコツ……》と、赤い帽子を被った全身黒づくめの男が、歩いてやって来る。 そうして、赤い帽子の男は、自分の近く迄やって来ると、ニンマリと満面の笑みを浮かべ、僕にこう言った。 『おめでとう!! 』 其の言葉を聞き終えたと同時だった。 自分の左胸の中に何かが、ズブッと入り込んで来ていた。 それは、何かヒンヤリと冷たい物だった……。 あの自分の中に入って来た物、あの感触は……多分ナイフだったのだろう……。 何となく死ぬ間際、自分の呼吸が停まる瞬間、無意識に触ったり見たりしていたのだろうか……。 自分の左胸に突き刺さっていた物が、ナイフだという事は、気付いていたらしかった。
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