■始まり■

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左胸に突き刺さったナイフによって開けられた穴から、ポタポタと……血が流れ落ち、命が尽きる最中―― “これでもう、彼女のカエデとも会えなくなるんだな……”と、そう思いながら死んで逝った事や、この時の最後の自分の想いと、其の姿も全て思い出す。 そして、身体の器を失い、魂だけとなってしまった自分が『ハッ!? 』と、我に返る。 それで、自分が死ぬ数時間前に思い出した事を再確認する。 魂だけの僕。 先ず、第一に、僕は彼女のカエデと楽しい食事をし、其の後、車で彼女を自宅近く迄、送ってあげていた事が1つ。 第二に、車の中で彼女が僕に教えてくれた、後ろの席で、こっちを見ていたという変質的な男が居たという話が2つ目。 第三に、赤い帽子を被った全身黒づくめの男が、僕に『おめでとう! 』と、言った直後に、僕の命を絶つべく、左胸にナイフを突き刺したという事実と、其の光景が3っつ目。 第四に、僕は彼女のカエデとは、もう会えなくなるんだな……という想いを残し、血を流し、命尽きて死んで逝ったんだという現実の中の真実の出来事が4っつ目。
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