■始まり■

8/23
前へ
/23ページ
次へ
其の瞬間、僕の魂に触れていた感じも無くなり、消えた男の声だけが、魂の奥底に残った感じがした。 そうして、この世で魂だけとなって、さ迷い歩く事となってしまった僕は、得体の知れない謎の男が言い残した言葉の意味について、考え始めてみる。 『ハルリナ=カエデが不幸になる要因の出来事を与え、生きる幸福への試練を受けて貰う? 』 一体、どういう事なのか? 正直、さっぱり分からない。 まして、彼女=カエデの為に命を奪われて死ぬ羽目になるなんて、誰が想像なんて出来ただろうか……。 しかも左胸に突き刺す前に『おめでとう! 』って何だよって、ムカついて、逆にこっちの怒りを、ナイフを突き刺した、其の相手に投げ返して言いたくなる話だ。 『全然っ! おめでたくなんかねぇ――っ!! 人殺しといて、何がおめでとうだよっ! ふざけんじゃねぇ~~よ! 』 魂だけとなってしまった自分だったが、正に読んで字の如く、魂の叫びってヤツみたいに、思わず叫んでいた。 其の魂の叫び声が聞こえたのか? 届いたのか? どうだかは全く分からないが、白い帽子を被った髪の長い、全身黒づくめの女性が、突然、僕の目の前に現れた。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加