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ザッと見て、500人はいるであろうか。
その彼ら達のお蔭で、左右端っこの方にいる座っている教員には目の陰となり、遅刻者の俺が入ってきた事には気付かなかった。
(ふぅ~……バレてねぇバレてねぇ)
身を少し屈めつつ、抜き足差し足忍び足で、足音を発てずに空いている席に座り、何事も無かったかのような素振りをした。
辺りを――蓮姉さんが気付いていないかを気にして聞こえなかったが、座って落ち着けば檀に上がって話をしている教頭先生らしき男性の話が耳に入ってくる。
――が、俺にとっては馬の耳に念仏と同様の話。
他の生徒のように耳を傾けるつもりは無い。
さて、ここでもう一つ補足だが、我が如月武術探偵学院の制服の色はワインレッドであるが(下は黒だぞ)、どの学校にも校章と言う物がある。
この学院の校章は何でしょうか?――何て問題出しても答えられないので……。
正解は、薔薇。
理由は『綺麗な花でも棘を持て』とか。
つまり、どんな人でもこの学院に入学したならば、常に気を張れ――と言う今は亡き創設者が込めた思いで薔薇である。
と、蓮姉さんから聴いたことがある。
果たして、これに響いた御方はどれぐらい居るのであるか……。
「………ん?」
一息吐いて、視線を前に向けると、見覚えのある人物が俺の前の席に、背を向かせて座っている。
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