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「はぁ!?」
突然の名指し――と言うより呼び出しを喰らった俺は悲鳴に近い声を上げた。
当然、新入生全員やこの場にいる教員、それとイリアも俺を見た。
しかし、俺は全員の視線を気にせず声を張り上げながら言った。
「ちょっと待てよ!!遅れて来たのは悪かった。だけど、何も呼び出すこと――」
最後まで言い終わらない内に、突如して響いた銃声が言葉を掻き消す。
それと同時に、頬に何かが掠める。
銃弾だとはすぐに分かった。
『口出し無用♪』
45口径のオートマチックを手に、恒例の笑みで声のトーンを上げながらそう言った。
その声、第一体育館全体に響き渡るぜ……。
ほら、蓮姉さん見て下さい……新入生の皆さん、おっかなびっくりして体震わしてますよ。
『良いな、一葉君♪?』
「……はい」
そこには確かに悪魔がいた……いや、鬼か?
兎に角…やっぱり、素直に聴こう……うん、その方が良い。
『では、これで私の話を終える』
蓮姉さんはオートマチックをホルスターに収め、マイクを戻して元の席に着いた。
「……ぁぁ……」
溜め息と共に小さな呻き声が零れ出す。
気付けば口元もびくついていた。
「蓮さんも…変わってないわね…」
真っ直ぐ見ながらも俺に向けて静かに言った。
「ああ………何時も通りの蓮姉さんで…俺は嬉しいぜ……」
『そ、それでは……えーと、続きまして……』
蓮姉さんの悪魔のような言動に強張っているのか、進行役の教員も声が妙に震えている。
しかし、そんな声は放心状態なりかけの俺の耳には何一つ入って来なかった……。
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