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両手を自分の顔辺りまで上げて、無力化のポーズを取りながら敬語を使ってそう言う。
自分で自分の名前を言うのは歯痒い。
それに恥ずかしさもある。
(だけど、これで少しは蓮姉さんも落ち着くだろう)
ハンドガンを自分の脚に装着しているホルスターに収めるであろう――そう考えていた。
「うむ、よく言えました」
思惑通りに蓮姉さんは、自分のハンドガンをホルスターに収めたのだった。
さて、お次は第一体育館に向かうと見せ掛けて、自由に行動しよう。
……と、蓮姉さんを裏切るような行為を既に頭の中では考えていた俺。
だが、その考えはやはり、無駄な足掻きだと知る。
「んっ!!?」
両手を上げながらもまだ校門の方を見ていた俺は、いきなりドンッと背中に痛みと衝撃を感じた。
あれ…何だか、下を見ると足は屋上の床に着いていない。
それと体がフワッと浮かんだ感触も受けた。
後ろを振り向けば、脚を突き出した状態のまま笑顔を浮かべている蓮姉さんの姿。
(えっ……まさか…、俺を蹴落としやがったなぁぁぁ!!?)
さっき受けた痛みと衝撃は、背中を蹴られたものであった。
そのお陰で、俺は今、宙を飛んでいる。
この光景を見ている者は蓮姉さんだけ。
新入生の皆さんは、もう既に玄関に入り終わって第一体育館へと向かっている頃であった。
(コレは……バッドエンド直行ですか……?)。
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