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「うおぉおおぉぉっ!!!!」
当然、引力によって地面へと垂直落下。
補足するが如月武術探偵学院の本館は五階建て。
間違いなく死亡してしまう高さ――運が良くても骨折は間違い無し。
「アディオス」
蓮姉さんの爽やかな声が耳に入ってきた。
今の彼女は、悪魔にも鬼にも、死神にも見えた。
(あぁ、本当に神様がいるならこの私めに神の御加護を……)
そう思っている最中にも落下は止まらない。
フと目を地上へと向けてみると、本館に沿って植えられた高さ4メートルはある並木が迫って来ていた。
「うっおっおっ!!」
ガサガサと葉が擦れ合わさる音を出しながら、俺は一つの木へと突っ込んでしまった。
「ぶへっ!」
並木に突っ込んでから、僅か十数秒で、地上へと後頭部から着地。
木の中へ入ったため勢い良いは殺す事は出来たが、後頭部を強く打ち、視界が一瞬星か電気だか何だかが迸った。
でも、何とか生きているのは、幸いであろう。
「つ~……」
打った後頭部をサスりながら上体を起こし、俺を蹴り落とした犯人を見上げた。
――蓮姉さんは俺のことを屋上から笑顔を浮かべて見下ろした。
それは間違い無く悪魔の微笑みだった。
「運が良いな。生きてる何て(笑)」
「うるせぇー、つか笑うな!」
怒声のように声を荒げた瞬間、俺のすぐ横の地面に小さな穴が空いた。
それは瞬時に銃弾によるものだと確信した。
「そろそろ入学式の時間だ。5分で第一体育館に来るように」
ハンドガンの銃口を空へ向けながらニッコリと。
銃口からは、まだ立ち上る微かな白い煙が出ていた。
彼女の声は恐いほど、綺麗に突き刺さるように俺の耳に入った。
俺はもう直感した。
彼女に刃向かう者には死が与えられると――従った方が身の為であると……。
「はい……分かりました」
「よろしい」
笑顔のまま、彼女は屋上から消えたのであった。
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