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 震える心を抱えたまま、扉に手をかける。  でもその扉をスライドさせる、力が出ない。  それは決して、扉が重いからってわけじゃなくて。  ただ、恐いから。  もう2か月も前の口約束―――  名前も知らない、連絡先も分からない。  いつも自習室に来てて、自分はコーヒーのくせにわざわざリンゴジュース買ってくれて、いちごみるくがポケットに入ってる。  それから、買ってきたパンよりもおにぎりが大好き。  黒縁の眼鏡に、つるつるの黒髪。  ジーンズにパーカーで、ロザリオチックなアクセをつけてて。  持ってるのはクリアケースに小さなペンケース。    付箋は黄色で、左利き。  たまに頭を撫でてくれて、最後に充電って言って、私を抱きしめてくれた。  私が知ってるお兄さんの全部。  逢いたくてたまらなかった。  大好きな人―――
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