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 「神楽千歳(かぐらちとせ)」    そう言ったお兄さん。    かぐらちとせ。  心の中でそう繰り返して、フフッと笑った。  「なぁに笑ってるの? ことちゃん?」  私の名前を聞いて、揶揄するように私をことちゃんと呼ぶお兄さん。  初めて、  初めて呼ばれた、私の名前……  涙が出そうになるのを堪えて、私は言い返した。  私がことちゃんなら……  「笑ってないよー、ちぃくん」  「ぶはっっ! 何、ちぃくんって」  「えー、千歳だからちぃくんだよ」  「ぶははっっ」  大きな口を開けて笑うお兄さんに、ううん、ちぃくんに私もつられてアハハと笑う。  やっぱり、ちぃくんの傍に居るのはとっても楽しくて幸せだ。  そう私が思った瞬間、グッと抱きしめられて、両手は私の背中に回された。  ギュッとギュッと力を込めて抱きしめる腕。    私を離さないって言うように。  そして……
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