1255人が本棚に入れています
本棚に追加
/124ページ
結局――――また、名前を聞き忘れた。
と思ったのは、帰り道にもらったイチゴみるくを舐めているときだった。
今日は、私が帰ろうと席を立った時にはお兄さんはすでに居なかった。
途中から間に人が来て13番のお兄さんは見えにくかったし、私も時間を計っていたので集中していたから気付かなかったのだ。
一声もないなんて寂しいな、とは一瞬思ったけれど。
明らかに集中して勉強している人に声をかける受験生もない。
今日楽しかったからこそ、バイバイも出来ない寂しさがあるけれど、今日は次という約束をして別れた大進歩の日。
最後の一欠けらまで噛むことなく飴を転がして、私は寒さ厳しい冬の中を走り抜けた。
最初のコメントを投稿しよう!