2/37
1255人が本棚に入れています
本棚に追加
/124ページ
 結局――――また、名前を聞き忘れた。  と思ったのは、帰り道にもらったイチゴみるくを舐めているときだった。  今日は、私が帰ろうと席を立った時にはお兄さんはすでに居なかった。  途中から間に人が来て13番のお兄さんは見えにくかったし、私も時間を計っていたので集中していたから気付かなかったのだ。  一声もないなんて寂しいな、とは一瞬思ったけれど。  明らかに集中して勉強している人に声をかける受験生もない。  今日楽しかったからこそ、バイバイも出来ない寂しさがあるけれど、今日は次という約束をして別れた大進歩の日。  最後の一欠けらまで噛むことなく飴を転がして、私は寒さ厳しい冬の中を走り抜けた。
/124ページ

最初のコメントを投稿しよう!