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 その日結局アイツから何もされずに済んだ私は、ずっと考えていた。  あの赤いコートの女性と私との共通点についてである。  電車内には他にも色々な格好をした女性がいるのに、何故私と赤コートの女性だけが狙われてしまったのか、私は考えた。  授業内容なんて全く耳に入って来なかった。  ただひたすら、作りの良いとはいえない頭で考える事しか出来なかった。  そしてその考えは、やがて一つの仮説を形作る。  飽くまでもしかしたらの段階ではあるが、アイツは膝裏位の丈の、ひらひらした洋服の裾に反応するのではないかという考えである。  人間誰しも、揺れ動く物には少なからず目を奪われるだろう。  だからそれに手を伸ばすという行動に走る人間がいても可笑しくはないのかもしれない。  ――もちろん、その行為を正当化するつもりなど毛頭無い。  これから先、アイツの行動を黙認してずっと我慢し続けるつもりもない。  とりあえず思いついた対策を実行してみようと、お弁当の卵焼きを口に放り込みながら心に決めた。
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