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そんなものさっさと警察に届け出れば良いと、朝の友達は言った。
彼女は今日1日私について回り、どうしたのだとか、元気がないのはリンちゃんじゃないだとか…兎に角色々と騒いでいた。
仕方なく私が放課後の教室で打ち明けると、「いやあぁー」と悲愴な叫び声を上げた後でサクッと一言。
それが、このアドバイス。
「何、泣き寝入りしてんのよ!駄目だよリンちゃん!」
「美佳…だから」
「早く!今スグ電話しなよ!」
そういう問題じゃない。
でもきっと、言っても分からないだろう。
「ねぇ美佳、警察を頼った事ある?」
「前に定期落っことした時、届け出たら誰かが拾ってくれてて…」
「あー…あの時のね」
それは運が良かっただけだよ、とは流石に言えなかった。
でも私は、本当にそう思っていた。
あんな事さえ無ければ、私は美佳に言われるより早く警察に助けを求めていただろう。けれどもう……
「警察なんて信じられない」
「…リンちゃん?」
「ごめんね美佳、帰って良いかな」
意識的に語尾に力を込めて言う。
私のただならぬ様相に、美佳も不承不承ながら私を解放してくれた。
校舎を出て、駅迄自転車を漕ぐ。
「あの日の事」を思い出すと、私は悲しみと怒りで気が遠くなる。
「あの日の事」に対する恨みは、アイツへのそれを、上回っているかもしれない。
「―――ッ!」
路地から飛び出して来た車を、間一髪で避ける。
一方通行の道を、逆走してきたのだ。
この地域は、とにかく交通ルール無視が多い。
社会で生活する人間として、どうして最低限のルールすら守れないのだろう。
車の運転手にも、アイツにも思い切り叫んでやりたい気分だった。
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