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 ――『県警は×日、○○駅のホームにおいて私立高校に通う女子生徒(18)のスカートの中を盗撮したとして、無職の男(19)を迷惑防止条例違反の容疑で逮捕したと発表した。』  コーヒーを飲みながら何時もの様に新聞を読んでいると、地域の細かいニュースが取り上げられたページの中にこんな記事を発見した。  盗撮行為に気が付いた通勤途中の男性が、男を捕らえて警察に突き出したらしい。 「………。」  私は、思わず溜め息を吐く。  どうしてこう、世の中には不届き者が多いのだろう。  考えなしが多いのだろう。  ホームで盗撮なんて大胆な事をしでかす人の気が知れない。  どうせバレやしないとタカをくくっているのだろうか…案外、捕まるのは覚悟の上で、見つからなかったらラッキーなどと思っているのではないだろうか。  仮に見つかったとしても、捕まらなければ問題ない、とか。  それにしても、この女子生徒は何て運が良いのだろう…私は思う。  通勤途中の男性が捕まえてくれた?  その上痴漢は逮捕された?  私の中に怒りが込み上げる。 「どうして……不公平過ぎるじゃん……」  しかし、彼女とて私と同じ犯罪の憂き目を見た被害者であることに変わりはない。  やりきれない思いを胸に、私は合成皮革のスクールバックを持って立ち上がる。 「行ってきます…」  傘持って行きなさいよ、という母親の声で、私はようやく雨が降っている事に気付いた。  ……しまった。  雨の日はバスを使うから、早く家を出ないと間に合わなくなるかもしれないんだった。
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