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 眠りに落ちてからしばらくの後、私は異変に気付いた。  意識が現実の世界へと引き戻される。  それは、胸の辺りに何か―微かだがハッキリとした外部からの圧力を感じた気がしたからである。 「………?」  私はまだ完全に覚醒しないままに、薄く目を開けた。  次は○○~。  車内アナウンスが聞こえ、自分が今通学途中だということを思い出す。  その時、下げたままになっている私の目が何か白っぽいものを捉えた。  それは人間の手の形をしている様に見える。ひどく緩慢な動きで、ゆっくりと、私の制服のブレザーの上を―― 「……!?」  完全に目覚める。  そして理解した。  私が眠った後に左隣に座った誰かが、私の上半身を触っている事を。  スクールバックの陰に隠れた姑息な手段と異様な迄に白い手に、私は嫌な予感がした。  そっと顔を上げて左隣を見る。  見慣れてしまったアイツの顔が、そこにはあった。  私が起きた事には気づいていないらしく、狸寝入りをしながらしっかりと右手を動かしている。  ……その姿が、おかしかった。  私は自らの左肘を、アイツの右手に叩き落とす。  声を上げる事もしなかったし、何の音もない静かな動作になった。  アイツの右手が、驚いた様に数センチ飛び上がる。それは医療ドラマの電気ショックを、私に思い出させた。  片目だけを開けたアイツと、目が合う。  
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