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 私は終着駅迄に着く10分程の間に、何度かアイツの方を振り返った。  けれどアイツは目を固く閉じて下を向いたままの姿勢でいるだけだった。  いつかの時と同じく、私にはこの後の行動にいくつかの選択肢がある。  自分が降りる駅で一緒に下ろし、駅員に通報するか。  今ここで自分が110番通報するか。  それとも無視して学校へ行くか。  中途半端な行動を起こしてしまった以上、私はこのままアイツを放っておくのが正直怖かった。  けれども再びアイツと接触を図るのも怖かったし、何より気分が悪かった。  では、このまま放っておいて良いのだろうか?  私は自問自答する。  答えは考えなくても分かる。  良くない。断じて許しておけない。  誰かに、背中を押して欲しかった。  けれど私は電車の中で独りだった。  迷っていたその時、ふと思い付く。  …コレがあった……
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