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「おはようございまーす、○○警察ですー」
低い声と共に駅員室に入ってきたのは、厳つい格好をした若い警察官だった。
厳つい、というのを具体的に表すならば、ヘルメットやチョッキを着た警備員の様な服装もとい装備である。
いくら痴漢とはいえ、こんな重装備の警官が来た事に私は驚いた。
しかし、彼の後に続く2人の警官――初老の男性と若い女性だ――は普通の制服姿だったので安心する。
「こちらが被害者の?」
厳つい警官が、私の方を見ながら駅員さんに問う。
面と向かって被害者と言われると、事実とはいえ少し気分が悪くなった。
悲しみと怒りを含んだ気分の悪さである。
――ええはい、で加害者が外に……
――把握しました、ではこちらで……
厳つい警官と駅員さんが会話をする傍ら、婦人警官が私の方へと歩み寄って来た。
「おはようございます、大丈夫?」
小柄で、化粧気の無い女性である。
意思の強そうな目が印象的だ。
「大丈夫です。お手数おかけして――」
「貴女のせいじゃないよ」
意識してにこやかに話し掛けてくれているのが分かった。
私は申し訳ないやら安心したやら、兎に角絶対的な味方が現れてくれたと思い、泣き出しそうになる。
けれど一方で「あの日」の記憶に囚われ、冷めていく自分にも気が付いていた。
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