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数分後、私は駅に停車中の電車の中にいた。
電車の左側のドアに向かって立つ。
――「橘さんが犯人を捕まえた時と同じ位置で、写真を撮らなくちゃいけないの」
カメラを抱えた警官が到着すると、婦人警官は申し訳なさそうな表情で私に言った。
一体どこでと思いつつ頷くと、刑事2人はそのまま駅員室を出て、停車中の電車へと足を踏み入れる。
田舎の単線とはいえ、改札に一番近い車両には10人程の人が座って発車を待っていた。
その人達に何やら告げ、全員を隣の車両へ誘導する婦人警官。
当然の事ながら、後に呼ばれた私に好奇の目が寄せられる。
その中には席を移らされたという明らかな不満を湛えた目もあった。
……地元で晒し者になった気分。
誇大妄想かもしれないが、私は確かにそう思う。
「じゃあ、捕まえた時の位置に立ってくれるかな? 後、犯人役は私がやるから、犯人の位置も教えてくれる?」
文句を言える状況では無い事位とっくに気付いていた私は、言われた通りに立つ。
左後方に立って私の方に手を伸ばした、婦人警官の手首を掴む。
それをカメラで撮る、もう一人の警官。
相変わらず色々な感情の入り交じった視線を送ってくる、関係などないはずの乗客達。
ふいに、泣きそうになった。
けれどもそれは叶わない。
この状況こそ、私がこれ以上泣かなくて済む様にするためのものなのだから。
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