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 それから私は、警察署に連れて行かれた。  防犯カメラの映像について話し込む駅員さんと鑑識めいた警官を残し、私達は外に出る。  時間にして8時を少し回った所で、駅には目的地に向かう沢山の人の姿があった。  今日は特に寒いとか、昨日の晩ご飯が何だったとか、割と呑気な話題で盛り上がる婦人警官と初老の警官の後に続く私。  断じて悪い事をした訳ではないのに、2人からなるべく離れて歩く自分が情けなかった。  本来なら今頃、学校に着いて友人達と話している筈なのに。  「授業だるいよー、宿題だってやってないし」などとぼやきながらも笑いあっている筈なのに。  アイツが憎くて、たまらなかった。  駅から警察署まで乗せて貰う車、それがパトカーだったらどうしようと密かに不安だった私だが、初老の警官が駅のロータリーにつけた車は、普通の乗用車だった。  助手席に婦人警官。  後部座席に私。  路駐の車を避けるにもウィンカーを出す律儀な運転で10分も走ると、警察署が見えてきた。  「あの日」と同じ、警察署。  私は横を通る学生の列に中学時代の友人を見つけ、慌てて俯いた。
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