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「何か最近さぁ、変なんだよね」
私が初めて母親にそう話したのは、2ヶ月程前の夕食の席だったと思う。
まだ厚手のコートなんて要らない時季で、私はスカートにブレザーというありがちな制服を来て学校に通っていた。
「勘違いじゃなかったらだけど…」
私は言いよどむ。
母親はテレビのリモコンに手を伸ばしていた。
「……週3でさぁ…電車に痴漢がいるみたい、てか、いる。毎回毎回キモいよ」
母親の手が止まった。
ゆっくりと此方を向き、口を開いた。
「…マジで?あんたが?」
「………そうだけど」
椅子に座り直した母親は私をまじまじと見、再び「あんたが?」と聞く。
彼女の言わんとする所は分かっていた。
女子としては高い、173cmの身長
膝上10cm未満の半端な丈のスカート
艶があるとは言えない、短い髪
顔も可愛くはない。
「ブス専なのかもね」
私は悔しさ半分に吐き捨てた。
母親は何かと得な顔立ちなのに、私は一つも彼女に似ているパーツが無い。
そして会話はなおざりな雰囲気で途切れてしまう。
母親がつけたテレビからけたたましい笑い声が響き渡る。
そう、私は愚かにも地獄の朝は直ぐに終わりを迎えると信じていたのだ。
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