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―ピピピピピピピピッ―
「う、うう~ん……」
やかましく鳴り響く目覚ましの音が、俺を無理やり目覚めさせる。
「ふぁ~あ、眠い……」
―コンコン―
「お兄ちゃん、起きた?
朝食出来てるから、早く降りて来てね」
「ああ、わかった」
俺は妹に促され、目を擦りながら部屋を出る。
……
「おはよ~、成人」
「おはよう、姉さん」
「おはよう、お兄ちゃん」
「ああ、おはよう」
2人に挨拶をした後、俺は椅子に座って朝食を食べ始める。
俺は業原 成人(ナリハラ ナルト)、どこにでもいそうな普通の高校生だ。
幼い頃に両親を亡くし、今は姉の支穂(シホ)と妹の若葉(ワカバ)との3人暮らし。
この春、俺はめでたく2年生に進級した。
「今日から3人とも、新しい生活が始まるんだよな」
「そうだね~、楽しみだよ~」
姉さんは俺と同じ全実学園(ゼンジツガクエン)に養護教諭として、若葉はその中等部に通う事になる。
「成人はもう支度出来た?
今日から寮生活なんだから、忘れ物が無いようにしないとね」
「わかってるよ。
しかし、新入生ならまだしも、俺たちまで強制的に寮に入れるとは」
そう、今年から始まる学園改革の一環として、全実学園は全寮制になったのだ。
「まあでも、今までみたいに何時間もかけて登校する必要が無くなったんだから、いいんじゃない?」
「それもそうか。
でもこの家はどうするのさ。少なくとも再来年の3月までは、誰も住まないんだぜ?」
「ああ、それは心配ないよ。
永世さんがたまに手入れとかしてくれるって言ってたから」
「そうなんだ」
永世さんと言うのは我が家のお隣さんで、両親を亡くした俺たちの面倒をよく見てくれている人だ。
「じゃあ、心配ないか」
「うん、安心して家を空けられるよ」
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、見て見て~!」
なんて話をしていたら、若葉がパタパタと音を立てて降りて来た。
「どう、可愛いでしょう?」
評判の良い全実学園の制服を着た若葉が、そう訪ねてくる。
「可愛いよ~、すごくよく似合ってるね」
「そうだな、よく似合ってるぞ」
「へへ~」
若葉はそのままくるっと1回転して、かなり上機嫌のようだ。
「あ、そろそろ出発しないと」
「いっけね」
姉さんの合図を聞いて、俺は急いで朝食を食べ終え、玄関に向かった。
……
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