夏の始まり

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蝉の声が聞こえ始めた。 例年にも増して、今年の夏は暑くなりそうだ。 そんなことを思いながら、私は待ち合わせ場所に急いだ。 時間にルーズな私は、待ち合わせ時間に間に合ったことなんか一度もない。 小学生の頃から、遅刻ばかりしていた。 起きるのが遅いわけでもない。 ただ、急ぐことが嫌いなだけだ。 急ぐとろくなことがない。 待ち合わせの時間に30分を過ぎようとしていた。 待ち合わせ場所のファミレスには、早歩きで10分程で着く所まで来ていた。 急いで歩いていると、横断歩道に立つ一人の男性が目に入った。 「あ!アキラ!」 まさしく今、待ち合わせをしている相手だ。 「アイ!もう俺は帰るからな」 そう言い捨てて、男は近くの駐車場に停めてあった、御自慢の高級車で去っていった。 私達が付き合う少し前に、ローンで購入したというブラックの欧州車。 私を口説くときも、いつも車のことを自慢していたっけ。 その車にまんまと魅了され、私は付き合うことにしたのだ。 って言っても、付き合いだしてまだ3ヶ月だ。 また一つの恋が終わった。 恋というか、関係。 異性と付き合っても、長く続くことはあまりない。 私から好きになったこともない。 ただ、近寄ってきた男がイケメンだったり、車持ってれば足になるし、飯だって食える。 そんな軽い気持ちで付き合う。 愛って何だろう。 何て考えたこともない。 楽しければそれでいい。
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