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「まずリリースについてだが、これは特に問題ない。先方から既に話が来ている。当然プロモーション活動はしない。まぁ、ベスト盤だ」
「はいっ」
返事ではない。私は手を挙げた。
「何だ?」
「1曲、書き下ろしを入れたい。雅のノートからさ」
たかこちゃんは前髪を上げて押さえ、そのままソファーに座り込んだ。
「仕上がっているのか?」
「詩とメロディは一応。でも合わせれないと……それにドラムは? 打ち込みか?」
よく考えたら無理だ。奏も揃わない。
引っ込めようとした私を、たかこちゃんが留めた。
「遥が来るまでに、ビッとしたの用意しておけ。それと、私も練習するからコピーもな」
「でも……」
「パートナーが決まったら、音源から雅のドラムを抜いてもらう。既存曲のライブ用だが、新曲プレイも創ってもらうさ」
「おおっ」
「それを持って、奏の所に飛んでもらえば出来る。データーで送ってもいいか」
チラッと確認の視線を受け、朝倉さんは頷いた。
「サンプリングしてシーケンサーを使う作業だと思います。プロに頼めば早いですね」
やった。
雅の詩(ウタ)を雅のドラムでリリースできる。デジタルが創り出す作品だけど、それでも私は嬉しかった。
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