旋律は春雷の如し

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『巧い……な。当然だが』 3月3日。日本は既に4日になっている時間だが、朝倉は単身シカゴを訪れていた。 アジア圏では無名に近いが、アメリカ・カナダで売り出し中の新進女性シンガー。 そのコンサートが一段落し、メンバーがバック・ステージに引っ込んだところだ。 周りに合わせ、朝倉もアンコールの拍手を送る。 渡米目的はツアーに参加している奏。こちらではKANAだが、奏としておこう。 今しがた体験した奏を、5年前の記憶と照らし合わせてみる。 大人しくなった……か? サポート・ミュージシャンである、己の分を弁(ワキマ)えたプレイに徹している。そうも取れるが、らしさが無い。 一貫してギブソン派だったはずなのに、ストラトやテレキャスしか使わなかった。 曲に合わせただけ……か。 アドリブ・プレイを信条とし、真矢が張り上げれば、その上を掻き鳴らす奏。 互いに押し潰そうとしているようで其の実、日本のロック史上未知の領域で融合する。 回答を提示する音楽。 堕天使が‘本物’と、評され、支持を得た所以(ユエン)はソコに有った。
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