旋律は春雷の如し

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照明の落ちているステージ上に動き回る人影を確認して、観客の拍手は一際大きくなった。 アンコールが始まるようだ。 スポットが灯り、照らされた主役がバック・バンドを紹介している。 おそらく最後に紹介されるのが奏だろう。 「グレイト ライトハンド フロム ジャパン カーナ!」 観客の声援も他と比べ格段に大きいが、リード・ギターとはそういうモノだ。 スッとシルエットが貫かれた小柄な佇(タタズ)まいに、朝倉は目を細めた。 『なんだ?』 異様なバランス。 光量調節が済んだ瞳に、映し出された奏の姿。 ドキッとした。 予感。否、確信が走る。 雰囲気の変わったプレイヤーが持つ、巨大な面積を持つボディ。 上下に2本並んだネックに左手を預け、右手でキーボード奏者に親指を立てる。 赤いギブソンSGダブルネック。 衆人環視のステージに、このギターを持ち出して他の曲を演るなら、ギタリストなど辞めた方がいい。 12弦が穏かに爪弾かれ始めた。
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