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力量のあるヴォーカルだ。
朝倉はステージを観て、そう思っていた。
しかし、どんなシンガーだろうと、この曲の主役はギター奏者に譲らざるを得ない。
世界中で群を抜く認知度。演れば盛り上がると分かっていても、ソロ・シンガーはライブでチョイスしないのが定石だろう。
他の曲を献身的に弾く、奏への感謝か。或いは褒美の一時なのか。
一音一音、リフを繰り返す度に奏が高まっていく。
膨大なエネルギーの噴出に向け、一段一段、階段を登るように。
息苦しい緊張感の中、高さの異なる双頭は天に掲げられ、続く奔流は堰を切って流れ出した。
「ぐっ……」
言葉にならない声。
高い技術は昔からだ。一応ギターを弾ける朝倉だが、根本的に弦へのアプローチが違う。
弾き、押さえ、引き、揺する。貪欲に音数を増やし、一音も無駄にせず拾い続ける。
神に愛された指が自由奔放に6弦を踊り、歪みに身を委ねながらも聴く者を確信へと、ヘヴンへと導いて進む……
……
……
静まり返った会場がドッと揺れる中で、朝倉も気付けば手を振り上げていた。![image=447871977.jpg](https://img.estar.jp/public/user_upload/447871977.jpg?width=800&format=jpg)
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