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少女とは失礼な紹介だったが、昨日観たギタリストと同一人物なのか? と、首を捻りたくなるほど幼く見える。
「初めまして。‘朝倉’で良いですよ。日本語、普段使わないですよね」
ソファーから勢いを付けて立ち上がり、差し出された右手。
思わずマジマジと見つめてしまう。
普通の……否、当たり前に俺より小さい手。確かに長目かもしれないが、指は5本しか無い。
……
グー・パー、グー・パー
俺が手を出さないので焦れたようだ。
「ああ、すいません。この指が何故……と」
クスクスと笑いながら俺の手を握り、片目を瞑ると小さく頷いた。
「必要に応じて増える。私のことも奏で。よろしく、朝倉」
なんだか……拍子抜けしてしまう。
単身で本場に渡り、その腕だけで結果を出して来たプロ中のプロ。
バンド時代、1番小柄な彼女は1部ファンの間で‘可愛い系’と位置付けられてはいたが、朝倉は扱いの難しい芸術家肌を予想していた。
嵩子にはベタベタな真矢も、なぜか奏を話題にしない。
第一印象の限りでは、仕事的にホッとした。
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